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点字こうめい

<特別寄稿> 思いやりの心と行動で、共生社会の実現を

点字こうめい79号②特別寄稿

女優、公益財団法人動物環境・福祉協会Eva(エヴァ)理事長の杉本彩さん

 
 「杉本さんは、すごくきれいに歩く人なんですね」

 京都で知り合った視覚障がい者の松永信也さんから、こう言われたことがあります。視覚障がい者を安全に誘導するための「手引き」の仕方を彼から教えてもらった時でした。手引きとは、声の掛け方や道の歩き方、階段の上り下りまで、いかに視覚障がい者が安心して歩けるかという考え方に基づいて繊細に作られたものです。手引きを学ぶことは、人として非常に大切な訓練だと思いましたし、それを通じて私がどういった人間かを感じ取る松永さんの鋭い感性にも驚かされました。

 彼は中途失明者ですが、著書を出版するなど、視覚障がい者の立場からさまざまな発信をされています。私もお話を伺って感動し、考えさせられることが多々あります。彼はある時、生まれつき目が見えない方から「私、ピンク色が好きなんです」と言われたことがあるそうです。理由は、小さい頃からピンク色の服を着ると、お母さまが「あなたは本当にこの色が似合う」と、よく褒めていたからだとか。私はこの話を伺って、目が見えなくても違う感性で色を捉えていたり、研ぎ澄まされている感覚があるのだと気付かされました。このように、いろいろな人が自分の経験や感じたことを語り合えば、視野が広がり、それが柔軟で寛容な社会の実現につながるのではないでしょうか。

 私は数年前から車いすダンスにも挑戦しています。社交ダンスをやっていた縁で知り合った車いす使用者のダンサー・奈佐誠司さんから誘われたことがきっかけでした。今では全日本車いすダンスネットワークの特別理事も務め、普及をお手伝いしています。車いすダンスの素晴らしさは、障がい者と健常者が一体となり、共に取り組むところにあります。車いす使用者と健常者で踊る場合、健常者がリード役を務めますが、パートナーの車いす使用者にもいろいろ助けてもらわなければなりません。“二人で奏でる”ものであり、対等なのです。健常者も障がい者も社会に必要であり、助け合う存在なんだ――私が車いすダンスで感じた一つの真理です。こうした考えが社会全体の標準になれば、とも思います。

 私が取り組んでいる動物愛護の活動でも、障がいがある方との出会いがありました。首から下が動かず、奥さまと介助犬のサポートを得て生活されている方です。介助犬は、その方の心の大きな支えにもなっていて、見ていると大変ほほ笑ましい気持ちになります。その方のSNS(会員制交流サイト)でも、介助犬が家族の一員として迎えられていることがよく伝わってきて、そうした受け入れ側の姿勢が本当に大切だと感じました。

 一方、盲導犬に関しては、関係者から「盲導犬ができることには限界がある」とも伺います。人工知能やロボットの発達もあり、今後、視覚障がい者をより安全にサポートできる技術が一日も早く開発されることを願ってやみません。

 現在の日本は、障がい者を社会で受け入れる体制が、まだまだ整っていないと感じます。それでもやはり、障がいのある方々には、ご自分の人生を謳歌するということを諦めずに、積極的に社会に出ていただきたい。そして、いろいろな問題提起をしていただき、私たちはそれにしっかり耳を傾けて、できることをやるべきだ――こう思います。私たちEvaの活動は動物問題が中心ですが、根っこにある問題意識は同じです。動物は社会の中で最も声を上げることができない弱い存在ですが、そこにまでサポートが行き届き、幸せに暮らせる共生社会が私たちの理想です。皆が共に生きる社会をめざして、障がいの有無や人間、動物ということに関係なく、皆が思いやりを持ち、いろいろな視点に立って行動できればとも思いますので、「点字こうめい」の読者の皆さまには、障がいがあっても臆することなく社会に出て、声を上げていただくことを期待しています。