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新型コロナ関連

コロナ変異株、分かったこと/ワクチン効果変わらず/北里大学大村智記念研究所 中山哲夫特任教授に聞く

2021年2月9日付

 全世界で急速に広がる新型コロナウイルスの変異株。昨年12月以降、国内でも計81人報告があり(8日時点、厚生労働省調べ)、市中感染の広がりも懸念されている。英国型や南アフリカ型など新型コロナの変異株について、北里大学大村智記念研究所の中山哲夫特任教授に聞いた。

北里大学大村智記念研究所 中山哲夫特任教授
北里大学大村智記念研究所 中山哲夫特任教授

■感染力は高い可能性、重症化リスク不明

 ――新型コロナウイルスが変異した原因は。

 中山哲夫・北里大学特任教授 変異はウイルスが増える際、一定の割合でいつも起きている。しかし、今回、注目を集めている英国型は、その割合を一気に飛び越えて変異し、感染力が強くなった。ウイルスの表面にあるスパイク状の突起が、細胞と結合しやすく変化したことが原因だ。

 この一足飛びの変異は、動物を介して加速した可能性も考えられる。昨年秋、欧州ではミンクから変異ウイルスが見つかり、大量に殺処分された。ミンクから人に感染した証拠は見つかっていないが、ミンクから他の動物を経て人に感染した可能性がある。

 ――南アフリカ型とブラジル型の変異株はどうか。

 中山 新型コロナウイルスに長期間持続して感染した人の体から変異株が生まれた可能性がある。免疫が極端に弱まり、ウイルスを自分で排除できない患者さんには、一度感染した人の血液からつくった血液製剤を使用する。そこにウイルスを攻撃する「抗体」が含まれるからだ。しかし、その治療中に抗体から逃れるようにウイルスが変異し、他の人に感染したとみられる。

 表面のスパイクの変異に英国型と同じような特徴があることから、感染力は高くなっている可能性が大きい。これら変異ウイルスの重症化リスクが高いかどうかは、まだ分からない。ウイルス自身が生き残れるよう、重症化リスクは低くなるのが一般的だ。

 ――新しい変異ウイルスは、今後も現れる可能性があるのか。

 中山 ウイルスの遺伝子配列を分析するが、全てのウイルスを調べられるわけではない。分析しているウイルスは世界の中で10%前後だろう。今のところ、その中で新しい変異型は見つかっていない。しかし、これだけ感染が広がれば、いろいろな変異型が出てくる可能性は十分ある。

 ――変異株にワクチンは効くのか。

 中山 英国型に関しては、現在のワクチンで効果が落ちることはないようだ。

 南アフリカ型とブラジル型は変異した経緯から、ワクチンで誘導される抗体の効力は多少落ちると考えられている。

 ただ、ワクチンからは抗体とは別に、感染した細胞を攻撃する免疫力も得られる。そうした「細胞性免疫機能」は幅広いウイルスに効く。新しい変異型が出てきても、多少弱くなるかもしれないがワクチンの効果はある。

コロナ変異株の比較
コロナ変異株の比較

■元の日常に戻るにはワクチン、治療薬、公衆衛生対策の「3本柱」が不可欠

 ――日本でも感染経路不明の変異株が見つかった。

 中山 変異型は気付いた時には、既に広がっていると理解すべきだ。感染力の高い変異型の方が主流となる可能性もある。感染拡大して母数が増えると重症化する人も多くなる。感染を抑えていくと同時に、変異型がどれだけ広がっているのか監視も必要だ。

 ――ワクチンや治療薬が変異を加速させるという指摘がある。今後の見通しは。

 中山 治療薬やワクチンから逃れるようなウイルスの変異が出てくる可能性は十分ある。実際、インフルエンザでも同じことが起きている。ワクチンがある程度普及しても、それで新型コロナの感染を完全に抑え込むことはできない。ここ1、2年ぐらいで流行が下火になれば、インフルエンザのように毎年冬場になると出てくる感染症の一つになるのではないか。

 ――コロナ前の日常に、いつ戻れるのか。

 中山 新型コロナが出てきて1年、ワクチンができて、まだ半年。誰もそんな予測はできない。これまでインフルエンザが流行しても普通に生活できたのは、ワクチン、治療薬、マスクや手洗いなど公衆衛生的な防御策の「3本柱」がそろっていたからだ。

 ワクチンの性能にしても、分かっているのは半年程度の有効性と安全性で、長期の有効性となると不透明なことが多い。そうなると治療薬が頼みの綱だが、新型コロナに対して特別に効くものがないのが現状だ。

 元の生活に戻れるか否かは、こうした3本柱がそろうかどうか、特に治療薬の開発にかかっている。

 なかやま・てつお 1950年生まれ。慶応義塾大学医学部卒。医学博士。北里生命科学研究所(現・大村智記念研究所)教授、同所長を歴任。専門は臨床ウイルス学。