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新型コロナ関連

新型コロナ感染拡大。各国の対応どう見るか/国立国際医療研究センター 忽那賢志国際感染症対策室医長に聞く

2020年4月18日付

 新型コロナウイルスの世界の感染者数が200万人を超えた。終息の見通しが立たない中、感染拡大が深刻な欧米各国では、外出制限などの取り組みが続く。こうした海外の対応をどう見ればいいのか。国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那賢志・国際感染症対策室医長に聞いた。

国立国際医療研究センター・忽那賢志国際感染症対策室医長
国立国際医療研究センター・忽那賢志国際感染症対策室医長

■多くが強力な外出制限/違反に罰則も、中国や欧米で効果上げる

 ――世界的に感染が拡大する現状の受け止めを。

 忽那賢志医長 米国やイタリアなど先進国で爆発的に増えている。これは、検査態勢がしっかりしていて十分に診断できていることも背景にある。これに対し、アフリカや南米では医療が脆弱なので、診断できていない症例が多く、実際はかなり拡大していく可能性がある。どこまで事態が悪化するのか、予断を許さない状況が続いている。

 新型コロナウイルスは、同じコロナウイルスであるMERS(中東呼吸器症候群)ウイルスなどとは違い、人から人に移りやすい。特に「密閉」「密集」「密接」の「三つの密」の環境下で広まりやすいことが、爆発的な拡大につながった。

 ――各国の感染防止策をどう見ているか。

 忽那 強制力を伴う外出制限によって事実上のロックダウン(都市封鎖)を実施する地域が多く、罰則がある地域もある。

 中国の場合、集団感染が最初に発生した湖北省武漢市を完全にロックダウンして都市機能を止めた。交通網を遮断し外出を禁じたわけだが、そこまで強烈な対策を取らないと流行を阻止できなかった。逆に、あそこまでやれば流行は抑えられるということだ。

 武漢市でも、ロックダウンから効果が出始めるまで1カ月ほどかかった。新型コロナウイルスの潜伏期は2週間以内なので、完全に人と人との接触を断てば、それくらいで効果は出てくるはずだ。

 イタリアやスペインは、死者数が下がってきているのを見ると、流行のピークは過ぎつつあるようだ。まさにロックダウンの効果で、2~3週間がたってようやく減ってきている状況だ。

 米ニューヨーク州でも厳しく外出を制限しているが、あっという間に感染者が増えて欧州の規模より爆発的な拡大になった。医療現場は相当大変なはずで、人員も医療器具も足りていない。対策の遅れというより、それ以上に早い感染拡大に追い付いていない状況だ。ニューヨーク州のような都市部での感染者数の増加は、多国籍の人が多かったり、人口の密集度が関係しているのだろう。

米ニューヨークで患者を運ぶ医療関係者ら=11日(ゲッティ=共同)
米ニューヨークで患者を運ぶ医療関係者ら=11日(ゲッティ=共同)

■東京に医療崩壊迫る/“3密”回避、長期的に/「まだ危機感が足りない…」

 ――日本が他国に学ぶべき教訓はあるか。

 忽那 他国の状況に照らせば、厳しい外出制限はできないにしても、やはり外出自粛を徹底することに尽きる。

 例えば、インフルエンザなら治療薬もあればワクチンもあるが、新型コロナの場合はどちらも開発されていない。感染者数の増加を少しでも遅らせることで時間稼ぎをし、その間に治療薬やワクチン開発をすることが重要だ。

 世界中の7割の人が感染して免疫を獲得することで終息させる「集団免疫」という考え方もあるが、そのためには相当数の死者が出るので現実的ではない。究極的に、人と人との接触を断つ方法しか残っていないのが現実だ。

 外出制限といっても、武漢市のようなロックダウンもあれば、自宅周辺なら外に出て運動してもいい地域もある。単に散歩に行くだけでは、人から人への感染リスクは低い。いわゆる「三つの密」には当てはまらないからだ。

 基本再生産数といって、1人の患者が何人の未感染者に伝染させるかの目安があるが、緊急事態宣言を出した意義は、基本再生産数が1を超えてどんどん拡大する状況から1以下に抑えることにある。1を超えないように保ち続けられれば、基本的に流行は抑えられ、社会機能を徐々に復活させられるようになる。

 仮に拡大を抑えられたとしても、第2波、3波に対する警戒は必要で、「三つの密」を避けるなどの対策は長期的に続ける必要がある。

 ――日本の現状はどうか。

 忽那 日本は緊急事態宣言が出ても、普通に町中に人がいるし、電車も混んでいる。まだ危機感が足りないのではないか。ニューヨークのような状況が、同様の人口密度や医療水準の高さを持つ東京都でも起こる可能性があることを認識すべきだ。結局は一人一人の危機意識の問題だ。

 医療現場は本当に疲弊している。うちはすでに満床で患者を断らないといけない状況にある。50近くの医療機関で断られて来た患者もいたが、そこまで都内の病院は崩壊しかかっている。

 われわれは武漢市からチャーター機で帰国する人の対応や、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の患者も診てきた。その対応が落ち着き始めた辺りで都内の流行が始まった。ずっと休めない状況が続いている。

 院内感染による医療従事者の感染拡大も危惧している。流行地域での医療従事者の確保とともに、マスクや防護服などの供給も急いでほしい。

■外出制限など諸外国の取り組み

 新型コロナウイルスの感染者数が最も多いのは米国で、16日時点で63万人を超えた。3月13日に国家非常事態宣言が出てから1カ月以上がたつが拡大を防げず、全50州のうち少なくとも42州で何らかの外出制限措置を講じている。

 特に、ニューヨーク州では死者が1万人を超え、医療崩壊寸前まで追い詰められている。医療や公共交通機関など不可欠な業種以外では従業員の出勤禁止を命じ、4月17日からは、公共の場所で他人と一定の距離を保てない場合に、マスクなどの着用を義務付けた。

 EU(欧州連合)で最も早い1月31日に非常事態を宣言したイタリアでは、3月8日に同国北部で移動を制限し、10日からは全国で外出制限を実施した。

 しかし、感染者は増え続け、生活必需品を除く生産活動は全て停止するなど規制を強めたが、マスクや防護服などの不足で医師や看護師への院内感染が拡大。医療従事者が足りずに医療崩壊の状態となり、各国の支援に依存している。

 一方、ドイツでは一部の州を除き、厳しい外出禁止措置は取っていない。公共の場で3人以上が集うことなどを禁じる「接触制限」で、人との一定の距離を置く行動を重視。買い物などの必要な外出は認め、20日からは一部の店舗で営業を再開する予定だ。

 新型コロナウイルスが最初に流行した中国湖北省武漢市では、1月23日からロックダウンを実施。他の地域とを結ぶ空路や鉄路、高速道路を全て遮断し、食料の買い物も禁じた。封鎖を湖北省全体に広げ、住民の移動を徹底して監視する態勢を敷いた。その後、新たな感染者が減少し、4月8日には封鎖措置を約2カ月半ぶりに解除した。

 制限措置の厳格さは他国とは段違いだが、外出を制限し地域間の移動を抑えることが、感染拡大の防止につながることを示している。

外出制限など諸外国の取り組み
外出制限など諸外国の取り組み

 くつな・さとし 1978年生まれ。山口大学医学部卒。山口大学医学部附属病院などに従事し市立奈良病院感染症科医長を歴任。2018年1月より現職。輸入ウイルスの水際対策を担う。日本感染症学会オリンピック・パラリンピックアド・ホック委員会委員。『症例から学ぶ輸入感染症 AtoZ』などの著書がある。