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新型コロナ関連

(コロナ禍のがん対策)在宅勤務、座り過ぎ注意/東京大学医学部付属病院・中川恵一准教授

2020年8月26日付

 新型コロナウイルスの感染拡大が、がん対策にも影響を及ぼしている。検診や手術の休止・延期が相次ぎ、早期発見や治療の遅れも懸念されている。こうした状況を踏まえ、厚生労働省委託事業の「がん対策推進企業アクション」が5日に都内で開いたメディアセミナーでは、東京大学医学部付属病院放射線科准教授の中川恵一氏が「コロナ禍におけるがん対策、がん治療」をテーマに講演した。要旨を紹介する。

東京大学医学部付属病院・中川恵一准教授
東京大学医学部付属病院・中川恵一准教授

■検診休止で発見遅れる恐れも

 新型コロナは未知のウイルスであり、慎重かつ適切に対策を講じなければならないことは当然だ。ただ、国内では新型コロナで1000人超が亡くなっている一方、がんによる死亡は年間約38万人(2019年予測、国立がん研究センターがん情報サービス)で、30年代後半までは毎年、増える可能性が高い。新型コロナ対策だけでなく、がん対策もおろそかにしないことが「全体としての健康」を守ることになる。

 その上で、コロナ禍におけるがん対策の課題として①在宅勤務による生活習慣の悪化②早期発見の遅れ③治療への影響――の3点を指摘したい。

 在宅勤務による生活習慣の悪化については、喫煙や飲酒もあるが、米国の研究では、座っている時間が長いと、がんで死亡するリスクが高まるというデータがある。理由は十分に解明されていないが、ホルモンバランスや血流の問題ではないかとも考えられている。もともと日本は世界有数の「座り過ぎ」の国だが、在宅勤務でその傾向がより強まっている。座る際は貧乏揺すりをしたり、30分に1回は立って動いたりすることをお勧めしたい。

 早期発見の遅れに関しては、がんは早期発見できれば約9割が完治するが、コロナ禍で検診が休止して受診しなかった間に、がんが進行する恐れがある。一つのがん細胞が、検診で発見できる1センチ大のがんになるまでに10~30年かかるが、例えば乳がんでは、1センチのがんが2センチになるのに2年弱しかかからない。検診は秋以降、混雑が予想されるので、受診できなかった人は早めに受けてほしい。

■感染リスク低い放射線治療

 治療への影響としては、医療従事者が新型コロナに感染した病院で手術を休止する事態も発生した。そうした中、重要性を増しているのが放射線治療だ。患者との濃厚接触による医療従事者の感染リスクが手術よりも少なく、通院で治療できるほか、照射技術の進歩で副作用が少なくなり、通院回数も減っているので、仕事と治療の両立もしやすい。費用面でも、99%程度の治療が保険適用となる。

 ただ、日本で放射線治療を受けている患者は全体の3割程度にすぎない。手術の方が良い場合もあるが、放射線治療が選択肢として患者にしっかりと示されることが今後の課題だ。