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新型コロナ関連

(ウィズコロナ・アフターコロナ)働き方はどう変わるか/立教大学経営学部 中原淳教授に聞く

2020年7月7日付
立教大学経営学部 中原淳教授
立教大学経営学部 中原淳教授

新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの企業で在宅勤務が導入されるなど、日本人の働き方は大きな変化を迫られている。ウイルスとの闘いが長期化の様相を見せる中、「ウィズコロナ・アフターコロナ」における働き方はどう変わっていくのか。立教大学経営学部の中原淳教授に聞いた。

■“フレキシブルワーク”が定着へ

――新型コロナは、日本人の働き方にどのような影響を与えたのか。

中原淳・立教大学教授 新型コロナは、人々のソーシャル(社会的)なやり取りを阻むため、オフィスで働くという前提が崩れ、多くの人が強制的にリモートワークを経験した。その割合は、内閣府の調査によると就業者の3割を超え【グラフ参照】、東京23区では約半数に上った。推奨しても遅々として進まなかったリモートワークが少なくとも一度は社会に浸透した格好だ。

経験した働き方
経験した働き方

職種・業種にもよるので一概には言えないが、これだけ多くの人がリモートワークを経験した意味は非常に大きい。オフィスに行かず、顔を合わせなくても自宅で仕事ができる経験は、働き方を考える契機となったことは間違いない。

――今後の見通しは。

中原 緊急事態宣言が解除された現在は、オフィス業務が再開されるバックラッシュ(揺り戻し)期に入っているが、東京都では感染者数が再び増加に転じるなど、感染第2波への懸念が高まっており、リモートワークと年単位で付き合っていく必要があるだろう。言い換えれば、オフィスでの仕事の仕方をアンラーニング(学習棄却)し、リモートワークのやり方を学び直さなければならない。

最終的には、コロナ時代における働き方の“落としどころ”がやってくる。例えば、「週3日はオフィス、2日はリモート」といった“フレキシブルワーク”(柔軟な働き方)となり、働く人の事情に合わせて働く場所が選べる形が定着していくだろう。その先のコロナ終息後には、在宅やオフィスといった概念が消え、自分で自由に働き方が決められるようになると見ているが、年数をかけた変化になるのではないか。

■就業時間でなく成果が問われる

――フレキシブルな働き方によって生じる課題は。

中原 労働時間のカウントの仕方や給与のあり方などさまざまな課題が考えられるが、企業側から見た最大の課題は、評価の仕方だろう。リモートワークの特徴は、仕事のプロセスが見えないことだ。管理職も絶えず部下を見続けることはできず、究極的には、目標に対する成果で部下をマネジメントし、評価するしかない。

その点では、従来の時間管理型の発想から成果・パフォーマンスを管理していく方向へと変わらざるを得ず、マネジメントの変化に応じた人事制度や評価基準が求められよう。日本では、長時間働くことが仕事に対するやる気の表れのように見られてきたが、通用しない。

――マネジメント層の意識改革が不可欠ではないか。

中原 これまでの日本の働き方から見れば必要だろうが、そもそも、成果で評価することはマネジメントの原理原則であり、リモートワークならではの対応ではない。私は企業の人材コンサルティングを行っているが、コロナ前から成果を上げてきたマネジャーが、リモートワークに切り替わった途端にマネジメントができなくなった事例はあまりない。反対に、元々できていなかった人は今、非常に苦労している。

多くの企業では従業員の目標管理を半年ごとに行うが、私が行った調査では、その目標を覚えている従業員は15%程度にすぎない。目標に対する成果をきちっと管理していないからだ。今後はこの点を高頻度に行うことが求められるが、それができれば確実に生産性は上がり、公正な評価も可能になる。ただ、注意すべきは、家庭内にオフィスが組み込まれてしまうため、働き過ぎになる人が増えやすい点だ。それによってメンタル面で体調を崩す人が出かねない。こうした点は、よりきめ細かく管理していく必要があるだろう。

■ITスキルと論理的説明力が重要

――働き方が変化していく中、働く人に求められる点は。

中原 まずは、IT(情報技術)スキルについて学び直す作業をいとわない姿勢だ。例えば、オンライン会議システムなどは次々に開発されるので、その都度、習得しなければならない。ITスキルはリモート社会において必須だ。

さらに大事になるのが、自分の仕事の状況をロジカル(論理的)に説明できる能力である。例えば、自分の仕事が行き詰まっている時、その原因を振り返り、上司に対して自分はどのように考えているか言葉にして相談する必要がある。これができなければ、上司もアドバイスできない。こうした能力は、対面で仕事をしていた時よりも格段に必要になる。

この点で今、厳しい環境にさらされているのが、新入社員や転職者だ。とりわけ新入社員は仕事のスキルがない上に、仕事を画面のみで体験せざるを得ず、習得することが難しい。例えば営業職であれば、営業同行の合間などに教育的な場面があったが、リモートでは、そうしたチャンスがつくりにくい。オンラインでの研修を行っている会社は少なくないが、仕事の中身については、丁寧なラーニング(学習)の体制を考えておかねばならない。

なかはら・じゅん 1975年生まれ。東京大学教育学部卒。博士(人間科学)。大阪大学大学院人間科学研究科博士課程で学び、米マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学准教授などを経て2018年より現職。専門は人材開発論・組織開発論。