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コメデジ・トーク

命を守るドクターヘリ

「公明新聞」2021年2月28日付

■本格運航から20年、東京都でも導入へ

 2001年に日本で本格運航が始まったドクターヘリ。20年の節目となる今年、東京都でも導入が決まりました。数々の命を救ってきた“希望の翼”を巡って、認定NPO法人「救急ヘリ病院ネットワーク(HEM—Net)」理事を務める南多摩病院(東京都八王子市)の益子邦洋院長と、公明党の山口那津男代表が語り合いました。

ドクターへリ
ドクターへリ

■公明党の熱い支援感じた(益子)
■配備の機運 特措法で向上(山口)

 山口那津男代表 先生が医療監修を務めたテレビドラマを通して、国民の間でドクターヘリの存在が広く認知されるようになりました。その必要性を感じたきっかけは何でしたか。

 益子邦洋理事 私が千葉北総病院に赴任した1997年に、病院から約40キロ離れた場所で25歳の男性が交通事故に遭いました。近くの病院で治療を施したものの良くならず、北総病院に転院されてきましたが助けられませんでした。彼は最初から適切な医療機関で治療を受けていれば、命を落とすことはなかった。車だと1時間かかる距離も、ヘリなら15分で搬送できる。助かるはずの命を救うためにも“攻めの医療”が必要だと強く思ったのです。

 山口 先生が強い問題意識を持っていた当時、行政サイドにドクターヘリへの関心は低く、この狭い日本でどれだけの需要があるのか、仮に導入するにしても維持費の問題もあり“宝の持ち腐れ”に終わるのではとの懸念さえありました。

 益子 2001年度に全国五つの基地病院でドクターヘリ事業はスタートしました。厚生労働省は5年で30機のドクターヘリを飛ばすと言っていましたが、5年後、全国で飛んでいたヘリは10機に過ぎなかった。まさに“風前のともしび”で、強い危機感からHEM—Netの國松孝次理事長(現会長)にお願いして、公明党をはじめ各党へ、特別措置法制定の要請を重ねていただきました。

 山口 公明党は各党に先駆けて03年からマニフェストに「ドクターヘリの全国整備」を掲げました。04年12月には党内にプロジェクトチームを設置して法案作りに着手し、07年6月の特措法制定を主導しました。法律で国の財政支援が明記され、「それならば、やってみよう」との機運が全国で高まった。公明党の地方議員の訴えもあり、ドクターヘリ導入が一歩一歩、着実に進んでいきました。

 益子 医師でもある公明党の渡辺孝男参院議員(当時)と、ドクターヘリの重要性を訴えるため東北地方を行脚したことは一生の思い出です。どの地域でも公明党の地方議員の皆さんから熱いご支援をいただいたことをよく覚えています。

■機動力ある小型機は重要(益子)
■首都圏の広域連携が可能(山口)

 山口 ドクターヘリは現在、44道府県まで広がり、いよいよ最後の空白都県をどうするかという課題が残っています。

 その一つである東京都では、東京消防庁の中・大型ヘリを活用した「東京型ドクターヘリ」を運用し、離島の急患に対応してきました。市街地には医師が乗り込むドクターカーを整備してきましたが、交通渋滞で遅れることもあります。このため都内の救命医からは、東京でも全国で普及している小型機のドクターヘリを導入すべきだとの要請を受けたことがあります。

 益子 都内の山岳地域で事故が起きたら、救急車では助かる時間内に負傷者を搬送できません。

 山口 小型ヘリを使った都内での救急のノウハウが蓄積されれば、東京を含む首都圏の広域連携が可能になり、予想される大規模災害にも役立つはずです。

 19年に小池百合子都知事と意見交換した際、私から知事にドクターヘリ導入を要望し、都議会公明党もその後の議会で訴えたところ、知事から前向きな答弁があり、21年度予算でいよいよ小型ドクターヘリ導入に向けた予算がつきました。

 益子 直談判で知事を動かしたのですね。東京が小型ドクターヘリを導入する意義は非常に大きい。大型機は10分ほどエンジンを温めないと飛べませんが、小型機は2分で飛べるので機動力が全然違います。救急医療は時間との勝負。重いけがの傷病者は1時間以内に手術すれば、助かる可能性が非常に高くなります。

 山口 脳梗塞で血管が詰まった場合、それを溶かす薬がありますが、早い処置なら後遺症も軽く済み、社会復帰も早まりますね。

 益子 HEMーNetの研究では、ドクターヘリで搬送された人は救急車による搬送に比べ、平均入院期間が18日短く、入院費も平均110万円安かったとのデータがあります。死亡率減少や後遺症の軽減だけでなく、社会的コストや医療費削減にも大きな効果があります。

■救急医療の恩恵 平等に(山口)

 山口 今後の課題は何でしょうか。

 益子 小型ドクターヘリは日中のみの運航ですが、夜間運航はパイロット不足や運航費用の問題でハードルが高い。そこで天候や時間にかかわらず、迅速に医師や看護師を現場に派遣する「ラピッドカー」を、ドクターヘリの基地病院には配備しておくべきです。現場には救急車がいますので、処置しながら搬送すればいい。早く治療を開始することが何より大事です。

 また海外では、谷底の負傷者に応急処置をするため、医師がワイヤで降下する訓練もしていますが、日本のドクターヘリにはそうした装備がありません。宮崎大学では防災ヘリを活用した訓練が始まっており、一歩一歩、進めていくことが大切です。

 山口 全国配備されるヘリを最大限に生かすため、国は自治体と連携を密にして支援すべきですね。公明党は国会議員と地方議員とのネットワークが持ち味です。全ての地域でドクターヘリの恩恵が行き渡るよう頑張っていきます。

 ましこ・くにひろ 1948年、茨城県生まれ。日本医科大学卒。同大学千葉北総病院の救命救急センター長としてドクターヘリ導入に尽力。人気ドラマ「コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」の医療監修も務めた。2014年より南多摩病院院長。