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コメデジ・トーク

対人地雷のない世界へ
全面禁止条約発効から20年

「公明新聞」2019年8月18日付

 対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)の発効から今年で20年。この間、政府や民間による対策は着実に実を結んできました。対人地雷問題に取り組んできた認定NPO法人のAAR Japan[難民を助ける会]の長有紀枝理事長と公明党の山口那津男代表に、同条約の成果や今後の課題について語り合ってもらいました。

 

(長)息長い支援活動が奏功
(山口)日本の技術、世界に貢献

 長有紀枝理事長 「難民を助ける会」は今から40年前、ベトナムやラオス、カンボジアのインドシナ難民を支援する目的で活動を始めました。活動を進めていく中、対人地雷で手足を失うなどの被害を受けた方々に大勢出会いました。当初は地雷の被害者支援を行ってきましたが、1カ月で数百人が被害に遭う現実を目の当たりにして、対人地雷自体をなくす運動にも関わるようになりました。

地元で住民に地雷回避教育を行うための人材を育成する講習会(「難民を助ける会」提供)
地元で住民に地雷回避教育を行うための人材を育成する講習会(「難民を助ける会」提供)

 山口那津男代表 公明党は1991年、和平合意を後押しするため調査団がカンボジアやベトナムなどを訪問した際、地雷被害の惨状を目にしました。「日本の技術力で助けてほしい」。現地の切実な声が、公明党の対人地雷の廃絶をめざす原点となっています。
 
  NGO(非政府組織)が地雷除去支援を本格化する前から、公明党は取り組んできたのですね。
 

探知・除去機を「武器」から除外

 
 山口 党として関係者からヒアリングを行い、NGOとの幅広い連携や地雷除去の技術開発などをめざすことにしました。
  特に力を入れたのが産学官が連携した地雷探知・除去機の研究開発です。ただ、機材は完成したものの武器扱いになるため、機材を輸出しても、除去作業が終わると日本に返さなくてはならないという課題が浮上しました。そこで日本が開発した機材は人道支援の目的で輸出できるよう「武器」の取り扱いから除外する特例を設けました。
 
  これによって、カンボジアなどに地雷の探知機を積極的に出せるようになりました。
 
 山口 ただ、傾斜地など複雑な地形では探知機が入りづらいため、金属に反応する探知機を使って人間が丁寧に地雷原を突き止め、除去せねばなりません。私も現地で実際に除去作業を模擬体験しましたが、膨大な時間がかかり危険も伴います。
 
  人道目的の地雷除去は、完全に取り残しがないようにしなければなりません。除去した場所に学校や病院、畑を造るからです。ただ“魔法の杖”のように、一つの機材で全てに対応はできません。
 
 山口 そうですね。地道な作業ですが、さまざまな手法や機材を組み合わせて除去を進めることが重要です。さて、今年は「オタワ条約」の発効から20年の節目を迎えました。これまで、約5400万個の貯蔵弾を廃棄し、過去5年で約830平方キロメートルの地雷原を取り除き、約107万個の対人地雷を廃棄するなど成果を上げています。
 
  「オタワ条約は、善人条約(地雷の廃絶に賛同した国しか縛られない条約)で不完全ではないか」と批判する声もありますが、条約に加わっていない国も輸出自体はやめています。現実的に地雷を使ってはいけないという大きな潮流ができつつあります。これも大きな成果と言えると思います。
 条約の成果はもちろんですが、地雷・不発弾対策の支援額で、日本は米国、欧州連合(EU)に次ぐ、世界第3位。こうした背景の一つには、公明党の長年にわたる息の長い活動があったからこそだと思います。
 

(長)新たな被害を伝える必要
(山口)輸出やめる国増やしたい

 
  新たな課題も出てきています。地雷除去が進み、被害者は減少していましたが、近年、シリアとトルコの国境や、ミャンマーとバングラデシュの国境などでは対人地雷が新たに使用され始め、被害者が増えているのです。
 
 山口 条約加盟国が増えたからといって地雷が世界からなくなるわけではありません。除去に要する年数も踏まえつつ、安全確保の優先度が高い場所から作業を地道に進めていく必要があります。
 それには、あらゆる国の支援が欠かせません。地雷の輸出をやめる国を増やしていく運動こそ重要です。これまで、あまり関わってこなかった中国やロシアにも促すべきです。
 
  日本では地雷除去への貢献もあり、解決したと思っている人が多いかもしれません。今こそ、地雷による新たな被害を伝えなければなりません。現在、「難民を助ける会」は、英国のNGO「ヘイロー・トラスト」と共に、2025年までに全ての地雷を除去することを目標に運動を展開しています。
 
 山口 新たな地雷の使用で犠牲者が増えた国は、紛争を抱えています。ただちに対人地雷をなくすのは難しい面もあるでしょうが、目標を持つ意義は大きいですね。
 同時に、例えば、ペットボトルに火薬を詰めて起爆装置を付け、木の枝につるしておくような手製の地雷まがいの武器への対応も必要です。爆発物と起爆装置から作られた手製爆発装置(IED)と呼ばれるもので、地雷除去を巡る課題はまだ残っています。
 

回避教育を行い犠牲者を減らす

 
  その通りですね。「難民を助ける会」は、地雷を回避する教育にも力を入れています。日本の交通安全教育に似ていますが、大きな違いは、子どもたちを地雷事故から守るために倫理的・道徳的ではないことも教えなくてはならない点です。具体的には「友人が地雷でけがをしても決して助けに行かず、大人を呼びましょう」といった内容です。地雷は一つの地点に複数埋まっているためで、一家に複数の被害者がいるのは、家族を助けに行って自分も被害に遭ったケースが多いのです。
 
 山口 重要な取り組みですね。地雷で傷ついた人の社会復帰に向け、医療的な支援や義足などの器具の開発といった具体的な支援をさらに強化していく必要もありますね。
 
  条約が発効した当時の空気は、地雷という非人道的な兵器の除去一色でしたが、20年が経過した今、状況は大きく変わっています。紛争や難民、環境といった問題はいずれも地雷が関わっており、地雷を出発点として、あらゆる世界の問題を発信する必要があります。与党である公明党だからこそ、できることがたくさんあると思います。政府の取り組みをけん引するような貢献をお願いします。
 
 山口 日本は軍事力で紛争を抑え込む国ではありません。人道支援で着実に実績を残し、世界に範を示すことが大事です。オタワ条約は、保有国の外堀を埋める国際的な軍縮の良いモデルとなりました。核など他の分野への応用を進めるべきであり、日本、そして公明党は、NGOの皆さんと協力しながら国際世論を喚起し、実効性ある軍縮を進める先頭に立つ決意です。
 
 
 おさ・ゆきえ 1963年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障」プログラム博士課程修了(博士)。91年から「難民を助ける会」事務局に勤務。カンボジア、旧ユーゴなどで難民支援活動に従事し、2008年から現職。09年、立教大学大学院教授に就任。

対人地雷除去支援を巡る動きと公明党の主な取り組み
対人地雷除去支援を巡る動きと公明党の主な取り組み
地雷除去機のリモートコントロールについて説明を受ける山口氏(左端)=2004年8月 アフガニスタン
地雷除去機のリモートコントロールについて説明を受ける山口氏(左端)=2004年8月 アフガニスタン
地雷探知機による除去訓練を行う山口氏(中央)=2004年8月 アフガニスタン
地雷探知機による除去訓練を行う山口氏(中央)=2004年8月 アフガニスタン
国内メーカーが日本政府の援助を受け、開発した地雷除去機=2004年8月 アフガニスタン
国内メーカーが日本政府の援助を受け、開発した地雷除去機=2004年8月 アフガニスタン
地雷除去用の防具を着け、地雷除去機の耐爆実証実験を視察する山口氏(中央)=2006年8月 カンボジア
地雷除去用の防具を着け、地雷除去機の耐爆実証実験を視察する山口氏(中央)=2006年8月 カンボジア
地雷除去機の耐爆実証実験の様子=2006年8月 カンボジア
地雷除去機の耐爆実証実験の様子=2006年8月 カンボジア
日本製の地雷除去機を使った訓練を視察する公明党の中南米訪問団=2016年9月 コロンビア軍トレマイダ基地
日本製の地雷除去機を使った訓練を視察する公明党の中南米訪問団=2016年9月 コロンビア軍トレマイダ基地
地雷原のそばを通って水を汲みに行く子どもたち=2017年 アフガニスタン(「難民を助ける会」提供)
地雷原のそばを通って水を汲みに行く子どもたち=2017年 アフガニスタン(「難民を助ける会」提供)

地雷の被害に遭った住民への義足の支援を行う「難民を助ける会」の職員(左)=2019年 ウガンダ
地雷の被害に遭った住民への義足の支援を行う「難民を助ける会」の職員(左)=2019年 ウガンダ

  
対人地雷全面禁止条約(オタワ条約) 対人地雷の使用、貯蔵、生産などを禁止する条約。NGOと、対人地雷の全面禁止に賛同する諸国の協力により、カナダ・オタワでの国際会議に端を発する交渉枠組みの中で1997年に成立し99年に発効した。締約国数は今年7月現在、164カ国。